「新規就農」とは、土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を開始することを指します。農業法人等に就職して農業をする場合とは異なり、新しく事業を起こすわけですから、ほかの産業での起業同様、本格的な稼働までにかかる初期費用が必要になってきます。
農業の場合はとくに、農村部への移住や農地の借用など必要な資金の種類もさまざまで、出費がかさむことが予想されます。
農作業に必要不可欠な農機具の購入にかかる費用も必要な資金のひとつですが、これに関しては中古農機具をうまく活用することで支出を抑えることが可能です。
この記事では、新規就農者が農機具の購入をするときに有用な情報をご紹介します。
新規就農者が中古農機具を購入すべき理由
新規就農者が農機具を購入する場合、新品よりも中古がおすすめです。中古農機具を購入するメリットを5つご紹介します。
初期費用削減でリスク軽減
新しく農業を始める際、農地の取得や資材の調達といった初期費用は避けられません。しかし、長期的な経営を考えるなら、初期費用はなるべく抑えたいところです。そういった状況において農機具にはあまりお金をかけられません。
中古農機具は新品に比べて安いことが多く、使用されている期間によっては、新品同様の機能を備えた農機具を安く手に入れられる可能性があります。
もしくは予算を据え置く場合、新品よりも性能の高い、もしくはより多くの農機具を手に入れることが可能になります。
また、どれだけ綿密に経営計画を立てても、実際に農業を行っていくなかで計画通りにはいかない部分は多かれ少なかれ出てきます。必要だと思っていた農機具が不要になり、新たに別の農機具の必要性が生じることもしばしばあります。
計画の変更によって購入済みの農機具が不要になってしまったとき、購入時の価格が高いほど損失が大きくなってしまいます。このようなリスクを軽減するためにも、新品より安く購入できる中古農機具の購入がおすすめです。
品揃えが豊富
「中古」という言葉がついていると、古くて性能の低いものをイメージする人もいるかもしれません。しかし、中古農機具市場にはコストを抑えつつも新品と遜色ない性能を持つ農機具も多く出回っています。
またメーカーや機種も多種多様なものが揃っており、自身の用途に合った農機具を見つけることも可能です。
中古農機具はオークションサイトやフリマアプリ、中古農機具店や農機具買取業者など、さまざまな形態で取り扱われています。そのため比較的新しい農機具でも安く入手できたり、古くても耐久性が高くまだまだ使用できる良質なものが見つかることも期待できます。
今後役立つ人脈や経験を得られる
農機具は購入後のメンテナンスが重要です。メンテナンスによって農機具を長持ちさせることができれば、経営面でも助けになります。
中古農機具の購入を通じて中古農機具販売店や地元のJAと信頼関係を構築できれば、今後必ず必要になってくるメンテナンスの際に、スムーズに交渉を行うことができる点も大きなメリットです。
また、そこで得た人脈をうまく活用できれば、今後農業を続けるうえで役に立つメンテナンスの知識や経験、技術を身につけることも可能です。
経験者に部品の交換方法を聞いて、実際に自分で部品交換をしてみたり、修繕をできるようになれば、ゆくゆくはメンテナンスにかかる費用を大幅に削減することができる可能性もあります。
生産性アップ
高機能な機械を導入することは、作業効率の向上と作業時間の短縮に役立ちます。とはいえ高額な大型農具などは、まだ経営の安定しない開業当初には手が届かないのが実情です。
新品より安く購入できる中古農機具であれば、新規就農者でも必要な機械を手に入れることができ、購入した機械を利用することで収穫量や品質の向上といったメリットを得られます。
環境にやさしい
新品ではなく中古農機具を再利用することは、環境保護にも貢献します。新品を製造する際に必要な資源やエネルギーを節約し、二酸化炭素の排出量も削減することができるからです。
ちなみに、日本のトラクターやコンバインは性能が良いため、古くなったものであっても海外での需要があります。農機具買取業者等に依頼すると高額で買取される場合もあり、資産価値の高さが魅力です。
そのため仮に離農したとしても廃棄せずに済むことが多く、廃棄を減らせるという点からも環境に配慮することができます。
【新規就農者向け】中古農機具を選ぶときの注意点
中古農機具は新品に比べて価格が安く、購入しやすいというメリットがあります。
一方で、豊富な品揃えにどれを選べばよいか迷ってしまったり、近年増えたオンライン上での購入に不安を感じたりすることも少なくないでしょう。
そこで、中古農機具の購入で失敗しないためにおさえておきたいポイントを4つ解説します。
選び始める前にまず、必要な種類と機能を検討する
いきなり探し始めるのではなく、まずはどのような農機具が必要なのか、さらにはどのような性能が必要なのかを明確にしましょう。
性能が優れているほど当然農機具の価格は上がっていきます。畑の大きさや目的によって必要な機能が異なり、選ぶべき農機具の機種やランクが変わってくるため、計画している農業経営や規模にあっているかという視点を持つ必要があります。
使用状況は必ずチェック
購入したは良いものの、すぐ壊れてしまっては結局修理費がかかってしまいます。高額な修理費を払うことになり、新品を購入した方が結果的に安かったという事態になっては元も子もありません。
そのような事態を防ぐためにも、年式、使用時間、故障歴、整備状況は最低限確認するようにしましょう。年式は古すぎると故障のリスクが高いのはもちろん、部品の供給がないために修理不可に陥ってしまいます。
また、可能であれば過去にどのような環境で使用されていたか、過去の所有者についての情報もあるとより安心です。
農機具は購入後のメンテナンスが重要であり、メンテナンス費も事業の運営資金に大いに関わってくるため、購入の時点で将来的なメンテナンスの必要性を見積もるようにしましょう。
適正価格を把握しておく
中古農機具の価格は、年式や使用状況、市場での需要と供給といった要素に応じて変動します。同じような機械がどのくらいの価格で取引されているかを調べ、適正価格を把握しておきましょう。
適正価格を知っておけば、価格交渉によって価格を下げるという手段を取ることも可能になります。
販売元をチェック
中古農機具を取り扱う販売店やオークションサイトは多数存在しますが、信頼できる業者から購入することが重要です。
JAや農機具販売店からの購入であれば、信頼性が高く比較的安心です。
インターネットから購入したり、ブローカー等から購入する場合、トラブルを防ぐために販売店・出品者の信頼性を事前に確かめる作業が必要です。
中古農機具を購入する際には、以下のポイントをチェックしましょう。
まずは販売店の規模です。ブローカーや個人で販売している場合は粗悪な物が多いため、過去の取引実績を注意深く確認する必要があります。
また、重要度の高い機械ほど故障時に農作業に支障が出てしまうため、どのような保証が付いているのか、アフターサービスは提供しているか、事前に確認しましょう。
実際に店舗があるか、販売店の所在地を確認することもおすすめします。同時にGoogleマップなどを参照して業者の評判や口コミも確認しましょう。ある程度実績のある販売店は安心できるため、販売店の営業年数も要チェックです。
実物を購入前に見ておくのが安心
ネットでの購入は便利ですが、可能であれば実際に機械を見て触れることができる場所での購入をおすすめします。
実際に見る際は、外観だけでなく、エンジンや駆動系などの内部も確認しましょう。外観だけスプレーで綺麗に塗装して見栄えだけは良く、状態が悪いということもあり得るからです。
外観の傷や汚れがないか、エンジンの始動性に問題がないか、駆動部に異音がないか、ベルトやバッテリー等の消耗を確認するようにしましょう。
まとめ
中古農機具は新品に比べ価格が安い点が最大のメリットです。新規就農者は中古農機具をうまく活用することで、事業の初期費用を抑えることができます。
ネットでの購入は注意が必要ですが、注意点を知って適切に選ぶことでコスト削減と効率的な農業経営を同時に叶えることができるでしょう。
この記事で得た情報をぜひご自身の事業に役立ててください。